「当事者目線でオープンな社会を」経営学部生4人が障害者支援を目的に株式会社を設立

Open Society の代表取締役社長・中村聡志さん
Open Society の代表取締役社長・中村聡志さん

 本学の経営学部生4人が精神障がい者の支援を目的とした株式会社「OpenSociety」を11月2日に設立した。同社は精神障がい者の職業訓練を行う事業所を来春に開所する予定で、就労意思を持つ障がい者と企業の橋渡しを目指す。同時に大学生などに向けて「精神障がいが自分の身にも起こることだ」と伝え、目指すべき社会について考えてもらうイベントを行っている。同社の代表取締役社長を務める中村聡志さん(経営2)に起業の経緯を聞いた。(鶴)

「ビリギャルよりもスゴイでしょう」 偏差値40上げて大学へ

 中村さんが福祉系の企業を立ち上げたのには自身の生い立ちが深く関係していた。福岡県朝倉市出身の中村さんは母子家庭で育ったが、障がいが身近な環境であったという。

「母親と同居の祖母が統合失調症を抱えていました。祖父はうつ病で自殺未遂。伯父は知的障害を持っていました」

 統合失調症は社会生活において適切な会話や行動が難しくなる病気である。幻聴や幻覚などの陽性反応が代表的な症状に当たる。そのため中村さんは母からの愛情をあまり感じることが出来なかった。家の中での居場所を失い、高校入学後はバイクで暴走などの非行に走った。高校3年のセンター試験では偏差値29.2という結果で当然、入れる大学はない。就職にも失敗し、ふらふらとしていた。そんな時だった。

「朝、起きると祖父が自殺を図っているのが見えて。一命は取り留めたのですけど即入院です。母と祖母も同時期に入院してしまって。一気に色々なことがあり、僕も心のバランスを崩しました」

 病院で診断された病名はうつ病だった。投薬を続けながら、半年ほどは家から出られない生活が続いた。その年の秋、久しぶりに2歳年上で美容師の兄と会って話をした。

「兄貴がね『お前は大学に行け』って言ったんです」

 中村さんは兄が大学進学を夢見ながらも泣く泣く諦めたことを知っていた。

「それで『俺は変わらないといけないな』って。兄貴と抱き合って泣きました」

 大学を目指すと決めた中村さんは携帯電話を解約し、地元の友人関係も断った。それからは1日15時間の勉強を続け、1年半で偏差値を40上げて69.2にし、大学に合格した。

「障害をオープンに出来る社会へ」 障がい者と企業の架け橋に

 中村さんは、大学入学後も学生団体を立ち上げるなど積極的に活動してきた。Facebookを通じて起業家と連絡を取るうちに起業したいという思いも高まってきた。福祉事業を行っている人に会った時、心の奥に蓋をしていた記憶が出てきた。

「中学生の頃から知的障がいを持った伯父を、気持ち悪がって拒絶してきたんです。でも高2の時に叔父が吐血して喉につまらせて亡くなってしまって。亡くなった後に、ちゃんと叔父と向き合っていたらなと後悔しました」

 中村さんはうつを体験して当事者の苦しみを知った。

「障がいに対して当事者意識がないから知ろうとしない。知らないと理解することが出来ないため、それが障がいに対する偏見に繋がっていると考えています」

同社のロゴ 社名には目指す社会への思いをこめた
同社のロゴ 社名には目指す社会への思いをこめた

 中村さんが目指すのは「障がいをオープンにしても理解される社会」である。その思いを「OpenSociety」という社名に込めた。利益を生み出し、会社として継続的に支援していくためにボランティアやNPOではなく、株式会社として設立した。      OpenSocietyは精神障がい者の支援に注力する。その理由として中村さんは精神障がい者の離職率の高さをあげる。

精神障がい者の離職率は身体・知的障がいと比べても高い。厚生労働省の平成25年調査によると身体障がい者の平均勤続年数が10年、知的障がい者が7年9ヶ月なのに比べて精神障がい者は4年3ヶ月と短い。

 「離職率が高い原因は、企業とのミスマッチにあります」と中村さんは分析する。その原因を無くすために、障がい者の職業訓練を行う就労移行支援事業所をハブとして、企業の職場環境の整備を目指す。具体的には2年間の就労支援を通して、各人の症状データを取り、就職時に企業に提供する。その活動と同時に経営者や現場で働く人に、障がい者雇用への理解を求めていくという。

「精神障がいの症状は一般化できるものではありません。地道ですが、障がいをオープンにできる社会を目指して歩んでいきます」

 

 

12月2日には本学大阪いばらきキャンパスにて、社会的マイノリティを支援するLadesonと合同でイベントを行う。詳しくは以下のURLから。

https://ledesone-opensociety.peatix.com/