「僕たちはどう戦争を語り継ぐか」

 アジア・太平洋戦争の終結から73年。被爆者の平均年齢は80歳を超え、戦争体験の語り部がいなくなる時代が近づいている。戦争体験者なき時代に私たちはどう記憶を継承していくのか? 戦争の記憶継承の可能性を「被爆者証言の世界化ネットワーク」と「立命館大学国際平和ミュージアム」の取り組みから考える。(鶴)

被爆者証言を世界へ 「全世代・全世界で議論を」

 京都外国語大(京都市右京区)に事務局を置く「被爆者証言の世界化ネットワーク」(NET―GTAS)は被爆体験の証言動画を外国語に翻訳し、海外に向けて発信している。現在までに132本の証言動画が翻訳されていて、国立広島・長崎原爆死没者追悼平和祈念館のサイト「平和情報ネットワーク」で視聴することができる。

 同団体の発起人で代表を務める京都外大客員研究員・長谷邦彦さん(74)は広島原爆で父親を亡くした。「原爆遺族」という言葉を背負い、毎日新聞記者として原爆とその後を生きる人々に向き合い続けた。定年退職後は京都外大で教鞭を取りながら、主宰するゼミなどで「ことばの壁」を超えた被爆者証言の継承という課題に挑んできた。2014年、そういった取組みを市民の力で継続的に行うために京都外大・筑波大・横浜国立大の教員に呼びかけてNET-GTASを設立した。設立当初は40人だった会員は現在200人を超える。会員の国籍もさまざまで半数ほどが外国人である。当初は5ヶ国語であった翻訳可能な言語数も現在は13ヶ国語に増えた。動画を見た米国人の女性から「感動した。自分も翻訳したい」という申し出もあったという。

NET-GTAS事務局にて 左から高原さん、阿比留さん、記者、長谷さん (NET-GTAS提供)
NET-GTAS事務局にて 左から高原さん、阿比留さん、記者、長谷さん (NET-GTAS提供)

 京都外大に通う高原康平さん(24)は「被爆者なき時代に人類は望ましい方向に進んでいけるのか。人類を想うのであれば、対話をしていかなければならない。若者だけでなく全世代的に話し会う場を設けるべきだ」と議論の必要性を説明する。

 長谷さんも「(被爆体験の継承には)時間軸を垂直的に降りていくことと、ことばの壁を水平的に超えることが必要である」と語る。

 これからの課題は、世界中の人々に活動の内容を伝え、被爆者証言に触れてもらうことである。同大の阿比留高広さん(24)は「より多くの方に被爆の実相を知ってほしい。そのために作品の活用・発信方法を模索しています」と意気込みを語る。

 

NET―GTASの翻訳した字幕付き動画は「平和情報ネットワーク」から見ることができる。https://www.global-peace.go.jp/

NET―GTASの公式ブログはhttp://www.kufs.ac.jp/blog/department/net-gtas

問い合わせ等はnet-gtas@kufs.ac.jp


「僕たちはどう向き合うか」 博物館から戦争体験継承を考える

 国際平和ミュージアムにて秋季特別展「8月6日」が11月6日から始まった。展示内容は2つで、1つ目の「レプリカ交響曲《広島平和記念公園8月6日》」は、戦後70年目となる2015年8月6日の広島平和記念公園の1日を17地点から撮影し、8月6日に対する人々の向き合い方を17台のモニターで映し出す試みである。

 「原爆への向き合い方は単純化できるものではありません」と同館学芸員の兼清順子さんは企画の意図を説明する。

「何か行動を起こすのも良いし、静かに祈り続けるのも良い。大切なのは戦争体験のない人が、あの戦争は何だったのか考えることではないでしょうか」

 もう1つの展示の「8月6日のワンピース」は広島での学徒動員中に被爆し、直後に亡くなった木村愛子さんのワンピースに関係する展示である。長らくワンピースは愛子さんのものとして同館で展示されてきたが、遺族への聞き取り調査で愛子さんのものではなかったことが発覚した。本企画ではそのことを踏まえた上で、ワンピースが被爆体験継承に果たしてきた役割とこれからの展示方法を考える。会場内に設けられたアンケートには「愛子さんのものではなくても、原爆の悲惨さを伝えるために展示を続けて欲しい」といった声が寄せられているという。

 

 秋季特別展の期間は12月16日まで。入館料は大人400円/本学生は無料

12月8日には広島の被爆体験者から受け継いだ証言を次世代に伝える「伝承者」を通して平和を考える「くにたち原爆・戦争体験伝承者講話」がおこなわれる。詳しくは同館HPから http://www.ritsumei.ac.jp/mng/er/wp-museum/